先週、世界最大の半導体受託製造企業である台湾積体電路製造(TSMC)の熊本・菊陽町にある第1工場が本格稼働を開始し、東京市場では半導体関連銘柄に資金が一気に流入。中でも東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコなどが急騰し、指数にも大きく貢献しました。
TSMC熊本工場の概要と市場反応
- 第1工場は2024年12月に月産55,000枚(300 mmウェハ)体制で稼働。12/16nmプロセス中心だが、稼働前倒しでの生産開始はインパクト大 。
- 研究開発・第2工場建設も進行中で、第2期は6nm世代プロセスとなり、2027年量産開始予定 。
- 日本政府支援や地方自治体との連携で、補助金・インフラ整備も万全。九州全域に波及する経済効果が23兆円超と推計され、市場では「新たなシリコンアイランド復活の起点」として牽引期待が高まっています。
東京市場の株価展開
6月13日の東証プライム市場では、以下の銘柄が目覚ましい動きを見せました:
- 東京エレクトロン(8035):1週間で+12%超、年初来高値を更新。
- アドバンテスト(6857):+8%前後と堅調推移。
- ディスコ(6146):半導体製造装置でAI需要に対応、決算通過後に上昇基調 。
- フジクラ(5803)・**九州電力(9508)**なども関連恩恵銘柄として資金注入を受けて上昇。
次なる注目ポイントは?
- 第2期・熊本Phase2の進捗:2027年完成予定の6nmライン設置に向け、建設着工時期や補助金の詳細発表が注目イベント。
- 日本半導体再興構想(ラピダスなど)動向:Rapid usの2nm試作ラインは今夏稼働予定で、JASM(TSMC日本JV)との連携強化に市場注目 。
- 地政学・政策動向:米欧のCHIPS法施行や中国市場リスク、日本国内の人材・インフラ整備の進捗が業績と株価に影響。
- 関連設備・材料メーカー動向:ウェハ洗浄、CMP、露光装置、電子材料などサプライチェーン企業は次段の利確へ。
- 輸出円相場と電力価格:円安メリット&電力需給の動きがコスト構造を左右。
有望銘柄ピックアップ
銘柄 | コード | 注目ポイント |
---|---|---|
東京エレクトロン | 8035 | 熊本工場稼働による装置需要拡大で受注安定。業績・株価連動性高い。 |
アドバンテスト | 6857 | 半導体検査装置トップ。AI/自動車向け需要取込みで増収期待。 |
ディスコ | 6146 | AI半導体対応ダイサーで設備更新需要。円安も追い風。 |
フジクラ | 5803 | データセンター・電線関連で電力・設備インフラ支援受けやすい。 |
九州電力 | 9508 | 電力供給面で熊本圏需要増加、安定供給の立役者的立場に。 |
投資家への提言
- 短期戦略:Phase2着工や地元発表など催しにタイミングを合わせた「テーマ買い」狙い。
- 中長期視点:2030年までのサプライチェーン再構築シナリオで、関連素材・装置メーカーを分散投資。
- リスク管理:補助金停滞、米中摩擦の激化、国内人材不足などイベントリスクに注意。
- テクニカル視点:装置株は直近の移動平均線を上回る水準で上昇傾向。逆指値や利確幅設定が有効。
記者総括
TSMC熊本工場の本格稼働により“国内版ファウンドリ再興”が現実味を帯びる中、東京市場では半導体関連株が“再注目の波”に跳ね返っています。第2期Phase2への資金流入や、Rapid usなど新興プロジェクトとの接続、補助金・人材動態、地政学情勢などが今後の鍵です。
投資家は「熊本構造の進化」を追いながら、広くサプライチェーン関連銘柄をウォッチ。また素材・装置・電力・インフラ面の周辺銘柄を織り交ぜたリスク分散型のポートフォリオ構築が、リターンの最大化につながるシナリオといえるでしょう。