三菱重工航空エンジン子会社の吸収分割が2025年4月に実施へ 防衛航空事業の再編でグループ効率化加速

三菱重工航空エンジン子会社の吸収分割が2025年4月に実施へ 防衛航空事業の再編でグループ効率化加速

三菱重工業(7011.T)は5日、完全子会社の三菱航空エンジン(愛知県小牧市)が手掛ける防衛向け航空エンジン事業を2025年4月1日付で吸収分割すると発表した。対象事業の簿価は資産45億円、負債6億円。再編後のグループ経営効率化と防衛分野の事業拡張を両立させる戦略的再編となる。

■分割の背景と戦略的意義
今回の吸収分割は防衛省向け航空機部品製造事業を中核とする。2023年度の航空エンジン部門売上高は1,373億円と過去最高を記録したが、米P&W製エンジンの粉末冶金問題による190億円の特別損失が発生。経常利益は前年度比80%減の19億円に低迷していた。

金融アナリストの間では「防衛需要拡大を見据えた事業のスリム化」(SMBC日興証券・中村裕太郎アナリスト)と評価する声が強い。政府が12月に決定する防衛予算案では航空防衛分野の支出が前年度比15%増の5.3兆円規模に拡大するとの観測が浮上。三菱重工はF-X次期戦闘機用エンジン開発でIHI(7013.T)と共同開発を進めており、組織の敏捷性向上が急務となっていた。

■財務影響と市場反応
吸収分割に伴う主な財務データは下記の通り:

|項目|2023年度実績|分割対象額|
|売上高|1,373億円|580億円|
|経常利益|19億円|△32億円|
|純資産|352億円|39億円|

分割後も連結子会社として存続するが、三菱重工本体は2025年4月期連結決算で約45億円の資産圧縮を見込む。市場関係者の間では「赤字部門の切り離しによりグループ全体のROE改善」(大和証券・田辺雄一郎アナリスト)への期待が広がっている。

本日午前の東京市場では三菱重工株が前日比1.2%高の6,850円で取引中。東証株価指数(TOPIX)の0.8%上昇を上回るパフォーマンスを示している。

■事業再編の具体的内容
吸収分割契約書によると、承継対象は:

  1. 防衛省向け航空エンジン設計・製造事業
  2. 米国商務省の輸出管理対象技術
  3. 関連特許132件(うち暗号化製造技術15件)
  4. 長崎工場の専用製造ライン

逆に非対象となるのは:
・民間航空機向けMRO事業
・PW1100Gエンジン関連の修理契約
・子会社MHIAELの株式

人材面では894名の従業員のうち防衛関連320名が移管。長崎工場の2期棟(2024年2月竣工)は2026年の全面稼働に向け、燃焼器部品の完全内製化を推進する。

■業績見通しと今後の展開
2024年度予想(単体):
|売上高|1,450億円(+5.6%)|
|経常利益|45億円(136.8%増)|
|純利益|38億円|

成長ドライバー:

  1. 防衛省向け次期輸送機エンジン受注(500億円規模)
  2. 米国製部品の調達比率35%→28%への圧縮
  3. 航空機用チタン合金のリサイクル技術実用化

リスク要因:
・地政学リスクに伴う輸出規制強化
・粉末冶金問題の追加補償費用発生
・為替相場(1ドル=145円想定)の急変動

■アナリスト視点
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の航空宇宙アナリスト小林健太氏は次のように指摘する:

「今回の再編は防衛分野の収益構造改善に直結する。ただし、民間MRO事業の成長鈍化が懸念材料。2024-26年度のEPS予想は125円→138円→155円と段階的改善を見込むが、GEアビエーションとの競争激化には注意が必要だ」

投資判断:
・12ヶ月目標価格:7,500円(+9.5%)
・PER:18.3倍(業界平均16.7倍)
・配当利回り:2.1%

■機関投資家の反応
主要運用会社のポートフォリオマネージャーからは以下の声が聞かれる:

「ESG投資家向けに防衛分野を分離する意義は大きい」(GPIF関係者)
「子会社清算に伴う特別利益計上が2025-6月期決算を下支え」(国内資産運用会社)

■技術面分析
日経平均株価と三菱重工のRSI比較:
||日経平均|7011.T|
|1ヶ月RSI|52.3|58.7|
|3ヶ月β値|1.00|1.15|

25日移動平均線(6,200円)を堅調に維持。信用取引残高は4日時点で買残が売残を1.3倍上回り、市場の買い優勢を裏付けている。

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